連載企画
LET’S DISCOVER THE SECRET OF A GOOD SMILE!

ー笑顔のヒミツを解き明かそう!ー

 この20年間でねんどろいどをはじめ数多くのフィギュアを世に出してきたグッドスマイルカンパニー(以下グッスマ)が、あらたに始めたフィギュアブランド「POP UP PARADE」。2019年のブランド立ち上げ以降、価格からサイズ、発売までのスピード、コレクション性において従来のスケールフィギュアにはないスタイルを確立してきたわけだが、この破格ともいえるアプローチはどのようにして実現することができたのか。そこには”フィギュアのグッスマ”というブランド力のなかから、若い才能たちによる試行錯誤の数々があった。そんなPOP UP PARADEを牽引する鳥居周平(事業本部 企画部)、高木ゆう(事業本部 企画部)、新田えりか(事業本部 企画部)の3人に、”ポッパレ”の革新性について話を聞いた。

時代の変化とともに変わるフィギュアのユーザー層。
国内外ともに求められる手に取りやすいフィギュアを

 2019年にスタートしたPOP UP PARADEは、3,900円均一で全高17〜18cmというコレクション性の高いフィギュアが、予約から4ヵ月後に手に取ることができるという。PRICE・SIZE・SPEED・COLLECTIONという点を徹底的にブラッシュアップすることでこれまでにないスタイルで高いクオリティーのフィギュア化を実現してきている。そこには、携わるスタッフの経歴も大きな影響となっている。

「僕は入社が2010年前後になりまして、最初は企画部として配属されました。その2、3年後に商品の開発に携わる製造部に異動しました。そこでフィギュアを作るための金型はどうやって作るのか、生産や量産から出荷までどんな流れなのかを勉強させてもらいました。そこからは鳥取県倉吉市の『グッドスマイルカンパニー楽月工場』で工場の立ち上げをやって、量産するスタッフさんと一緒に塗装のノウハウや整形の技術を試行錯誤をしたのち、また3年後に東京へ戻ってきました。そのあとはカプセルトイやバンダイナムコアーツさんと協業の『With Fans!』や、単発でねんどろいどの企画に携わっていました。POP UP PARADEの企画が立ち上がったのはその頃だと思います。当時は高木がひとりでやっていたんですけど、そこに加わったという感じです」(鳥居)

「私は2018年の4月入社になります。当時の課題として、グッスマのスケールフィギュアは1万円ぐらいからのものが多く、お客さんが予約してから1年ぐらいお待たせすることが多い。そうしたスケールフィギュアやねんどろいどとは別の軸が欲しいというPOP UP PARADEの雛形のようなアイディアがありました。そのアウトプットをどうするかというのを私が担当することになったんですね。私はもともとプライズ景品のメーカーで働いていて主にフィギュアを担当していたので、低コストのフィギュアを作るというノウハウを買われてグッスマに採用されたのもあり、会社が作りたいものと私ができることがちょうど合致したという感じです」(高木)

「私は入社したのがいちばん最近で、今年の3月になります。私もプライズ景品のメーカーでフィギュアを作っていたので、安価でフィギュアを作るノウハウを活かし、一緒にPOP UP PARADEを作ることになりました」(新田)

 工場での動きも含めてフィギュア製造における工程を熟知した鳥居と、低コストのフィギュア製造のノウハウを持つ高木と新田らがPOP UP PARADEという”これまでにないグッスマの新ブランド”を生み出す原動力となったわけだが、そもそも現代において、”低コストでユーザーの手に取りやすいフィギュア”への需要はどのようなものなのか。

「現在、フィギュアのユーザー層というものは多岐にわたっています。今は日本以外にも中国や北米、欧州といった世界中でフィギュアという商材が売れ始めていて、なかでもライトユーザーが増え始めています。日本のアニメやゲームが海外で放送されたり発売される環境が確立されて、そこでフィギュアをコレクションしたいという若いお客さんが増えてきたから、手に取りやすい商品がさらに求められてきている状況になっているのではないかと思います。塗装済み完成品フィギュアというジャンルは日本でも成熟してきていますが、フィギュアの超絶技巧や大きなサイズ感、あるいは原型師さんの特徴が出ている彫刻的なものが好きな方がいる一方、安価な商品を求めているお客さんも国内外にすごく増えてきているわけです」(鳥居)

 フィギュア本来の精巧な作りを楽しむ従来のユーザー層がある一方で、入手しやすいフィギュアへの需要が高まっている現在の流れのなかで、グッスマがPOP UP PARADEというブランドを立ち上げたことを鳥居は「必然だし、すごくいい話だなと思いました」と語る。

「工場で生産しているのを見るとわかるのですが、原型師さんから我々のような企画や生産を見ている人間、工場に勤めている人もみんな、フィギュアというものは商品を見て手に取ってもらってなんぼの嗜好品だと思っています。そういった点においてPOP UP PARADEは敷居が高くない、若い人から上級者まで多くのユーザーに手にとってもらえるブランドなんじゃないかなと」(鳥居)

手に取りやすいフィギュアを実現するための試行錯誤。
そこから生まれた”ポップで楽しい”フィギュアブランド

 ”手に取りやすい新しいスタイルのフィギュア”を実現するべく立ち上がったPOP UP PARADE。ではなぜ、価格を抑えてリリースのスピードを上げるということが可能となったのか。POP UP PARADEは既存のスケールフィギュアと何が違うのだろうか。

「何がいちばん違うかというとPOP UP PARADEのフィギュアは小さいんですよね。これまでの弊社のスケールフィギュアは全高20〜23cmという、いわゆる1/7から1/8スケールというものがほとんどです。そんな中、POP UP PARADEは1/10より少し大きいというサイズ感にしています」(高木)

「フィギュアを作る際、原型から金型をとってそこにプラスティックを流し込むわけですが、まず金型を作るのに費用が発生するわけですね。そこでサイズを小さくすることで金型の数を抑え、コストも軽減できるんです。またそのあとに彩色をするんですが、それは機械ではなく手作業なので、そこでの加工もなるべく減らそうという設計にもなっているんですね。例えばフィギュアでは髪の色などに深みを出すようにグラデーション塗装といって複数回塗装をするんですが、POP UP PARADEではそうした後加工はいちばん効果的な髪の毛や目立つ部分に絞るようにしています。また衣装も比較的シンプルに、ユーザーさんが見慣れている服装でありつつ工程数が少ない衣装を選んでいるというものがありますね」(鳥居)

「そこはプライズフィギュアのノウハウですね。プライズはもっと安い値段で作っていますが、基本的な技術は似ています」(新田)

「もちろん、ここをコストカットしちゃダメだよねというのはあって、そこは自分が工場にいた経験もあって適切なバランスを取れていると思います。グラデーション塗装もただ単に減らしているのではなくて、効果的に取捨選択をしてお客さんが求める姿というものを再現していくというわけです」(鳥居)

 また、POP UP PARADEの売りは、予約から実際に手元に届くまでのスピード感にもある。本来は予約開始からおよそ1年かけて量産して発売に至るのだが、POP UP PARADEの場合は予約開始から約4ヵ月というスピードで発売を実現している。

「POP UP PARADEのご予約からお手元に届くまでが早いのは、たとえば予約プロモーションの展開の仕方にも工夫があります。フィギュアは大体ご予約期間を1ヵ月ぐらい持つのですが、その間にデコマス(デコレーションマスター)と呼ばれる彩色見本をお店で飾ったりして、お客さんの受注意欲を高めるためにプロモーションをするんです。でもPOP UP PARADEではそれをせずに、通常よりも早いタイミングで生産にとりかかるということがあります」(鳥居)

 そして、そのようにして生産スピードを高めたことで、POP UP PARADEは1年間でおよそ30体という、これもまた従来に比べて驚くべきラインナップ数を実現するに至った。しかもそのタイトルは初音ミクといった定番から『僕のヒーローアカデミア』『天気の子』『ペルソナ5』など幅広いものとなっている。その点においてもPOP UP PARADEならではの方向性が伺える。

  • POP UP PARADE 緑谷出久

  • POP UP PARADE 森嶋帆高/天野陽菜

  • POP UP PARADE ジョーカー

「ターゲットとしているユーザーが若く、それこそ初めてフィギュアを買おうかなという人たちなので、そういう方たちに向けたキャラクター選びではあります。また国外にも目を向けると、中国では日本の最新アニメが流行っていますし、北米では『ヒロアカ』などジャンプ系が人気である、欧州ではちょっと懐かしい1990年代のアニメが流行っているというのもあって、ラインナップの時代が散っているのもありますね」(鳥居)

 数々の試行錯誤の末に生まれたまったく新しいブランド。そこにはフィギュア収集のあらたな入り口となるようなポップさを持つものとなった。そうしたアティテュードはPOP UP PARADEというブランド名にも表れている。

「”POP UP”という飛び出す楽しそうなイメージと、”PARADE”という言葉を並べることでの楽しさ、3,900円均一という集めやすい価格帯で、好きな作品の仲間たちを揃えることができるシリーズであるということを伝えたくてこの名前にしました。グッドスマイルという名前をあえて入れなかったのも、これまでとはまた違うブランドであるというイメージを作りたかったんです」(高木)

世界中に向けて、より幅広いラインナップが控えるなか、
POP UP PARDEが見つめるフィギュアの未来とはーー?

 そうした理念のもと2019年6月にスタートを切ったPOP UP PARADE。最初にリリースされたのはグッスマの定番キャラクターともいえる初音ミク。しかしその反響は少し不思議なものだったという。

  • POP UP PARADE 初音ミク

「反響は……最初はあまりなかったんですね。おかげさまで大変ご好評いただいて、たくさん出荷する事ができたのですが、ねんどろいどやほかのスケールフィギュアに比べてお客さんのリアクションが少ない」(高木)

「そもそもポッパレを手に取るビギナー層は、そうした感想を発信しないんですよね」(新田)

「撮影して自分のブログにアップしてというのがなかっただけに、かなりライトな方向に刺さったんだなっていう実感がありましたね。普段買わない人が買って満足されているんだなってわかったというか」(高木)

「エンドユーザーのリアクションが増えてきたのは『ネコぱら』あたりからですね。そこで『この値段でこのクオリティーはすごい』という声を目にするようになってきました」(新田)

「お客さんにも『ポッパレってこういうことなんだよね』って伝わり始めたのがこの頃だと思います。やっとスタートラインになったんだなって」(高木)

  • POP UP PARADE ショコラ

  • POP UP PARADE バニラ

 スタートから1年たち、いよいよそのブランドイメージが確立されつつあるなか、今後のラインナップもまた興味深いものとなった。現在ヒット中のコンテンツである『BanG Dream!(バンドリ!)』、そして『鋼の錬金術師』『幽☆遊☆白書』という懐かしいタイトルからのフィギュア化という、実に魅力的かつ幅広いラインナップだ。

「『バンドリ!』では日本国内のカジュアルなファンにちゃんと届けられたらいいなと思っています。ファンもお若い方が多いので、そういう方にコレクションしていただきたいですね。『鋼の錬金術師』は北米での人気が高いので、ここで北米に改めてPOP UP PARADEってこういうものですよって提示したい。『幽☆遊☆白書』はアジアなど、どの地域でも人気なので、きちんとその声に答えられるような商品に仕上げていきたいですね」(鳥居)

「懐かしい作品のフィギュアもお届けする。というのはポッパレの売りのひとつですが、そうした作品を今の技術力で見せたいというのもありますよね。それもあって懐かしい作品は今後も仕込んでいきたいと思います」(新田)

 最新から懐かしいものまで、さらにはよりリアルな造形と、扱う作品や表現方法も多彩であることを示唆するPOP UP PARADEの今後のラインナップ。スケールフィギュアのニューウェイブとしてシーンを牽引しようとする彼らは、今後のPOP UP PARADEへどんな夢を描いているのだろうか。

「今後は”人外”にもチャレンジしてみたいですね。クリーチャー的なものとか人間的じゃないもの、それこそ4足歩行のものとかを作ってみたいです。そういうポテンシャルがあるブランドだと思いますし、そういう挑戦をしながら、一個一個の出来は大事にしていきたいというのはありますね」(新田)

「『あなたの好きな作品をちゃんと買いやすい値段でラインナップしますよ』ということを伝えたいですね。そこから『POP UP PARADEならそれができるんだ』と思ってもらえるのが素敵な未来なのかなと。ちゃんとファンに寄り添っていけるシリーズ展開をしていきたいし、今後のラインナップや値段、お届けまでのスピードも含めてちゃんとお客さんの期待に沿った展開をこの先に続けていきたい。そしてそれをユーザーさんに感じていただけるようなブランドに成長していきたいですね」(鳥居)

「私の担当としては美少女のフィギュアが多いんですが、作っているのが楽しくて。『ネコぱら』の姉妹もまた仕込んでいるので、それをかわいく世の中にリリースしていきたいなと思います。私も2年在籍して、グッドスマイルカンパニーのノウハウを吸収できているなという実感があるので、今後も完成度を高めてPOP UP PARADEのクオリティーを底上げしていきたいなと。戦いはこれからだと思っています」(高木)

  • POP UP PARADE リオ・フォーティア

  • POP UP PARADE アクア

  • POP UP PARADE 湊友希那

© 堀越耕平/集英社・僕のヒーローアカデミア製作委員会
©2019「天気の子」製作委員会
©ATLUS ©SEGA/PERSONA5 the Animation Project
©Crypton Future Media, INC. www.piapro.net
©NEKO WORKs/ネコぱら製作委員会
©TRIGGER・中島かずき/XFLAG
©2019 暁なつめ・三嶋くろね/KADOKAWA/映画このすば製作委員会
©BanG Dream! Project ©Craft Egg Inc. ©bushiroad All Rights Reserved.

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