連載企画
LET’S DISCOVER THE SECRET OF A GOOD SMILE!

ー笑顔のヒミツを解き明かそう!ー

 20年の歴史のなかでもフィギュアのイメージが強いグッドスマイルカンパニー(以下グッスマ)が、2018年に立ち上げたドールブランド「Harmonia bloom」。「グッスマがドールを発売する」というインパクトもさることながら、”調和・花”を意味するブランド名にあるように、”花のように、いつの時代も愛される「かわいい」”というコンセプトをもとにこだわり抜かれた造形はすでに多くのファンを生んでいる。そんなHarmonia bloomをプロデュースするグッスマ企画部所属の田中詩凡、原型師である石長櫻子(植物少女園)のふたりにHarmonia bloomのこだわりについて話を聞いた。とても興味深いエピソードが多く、楽しみにして欲しい。

グッスマで、ドールを作りたいーー
Harmonia bloomを生んだひとりの新入社員と原型師

 ドールというと、小さな手足に大きな頭とくりっとした眼の人形……というのが多くの人がイメージするものだろうか。あるいは古くは子供向けのテレビ人形劇や、「バービー」や「リカちゃん」といった着せ替え人形、アニメ化もされたPEACH-PIT原作の「ローゼンメイデン」などを連想する人も多いだろう。同じ人形文化から派生したフィギュアとは一線を画した独自のカルチャーを築いているドール。まずはその成り立ちと現在を、石長、田中のふたりの視点から解説してもらった。

「昔(1980年~90年代後半)のドールは、どちらかというと創作人形を作家さんが作って個展で出すというのがメインでした。そこから1998年にボークスさんが素材をレジンにした『スーパードルフィー』というシリーズが発売されるのですが、それが爆発的にヒットしたんですね。人形というと今まで鑑賞するのが主な楽しみ方だったのが、耐久性のあるレジンになったことで自分でメイクしたり服を作ったり外に連れ出したりと遊び方が広がったことで、そこから一般のユーザーさんが増えたんじゃないかなと思います」(石長)

「近年のドールの在り方は、国内外問わず多様化しているように感じています。『リカちゃん』や『バービー』といった女児玩具としてのお人形にとどまらず、球体関節を用いたレジンキャストのドールや、大人の女性に向けたファッションドールというものが日本にとどまらず韓国などアジア圏にも広がりを見せています。近年は手軽に持ち運べるサイズのドールボディに、フィギュアの頭をつけて遊んだりする新しいドールの遊び方が広がってきていて、ドールとフィギュアの境目もどんどんなくなってきているように感じます。あと最近だとSNSの普及もあって、撮影した画像で多くの作品を見てもらえる機会が増えてきたことも大きいですね」(田中)

 女児玩具としての着せ替え人形からさらに進化して、着せ替えはもちろん、ウィッグやメイク、ドールアイ(眼)までをカスタマイズできる、球体関節の可動性が広がったドールの登場は、そのフェティッシュなルックスとともに本来の愛好家からサブカルチャー方面にも影響は波及し、男女問わずさまざまな層に人気を呼ぶことになる。そうした現在も盛んなドールシーンに、グッスマがオリジナルブランドを立ち上げることとなる。その中心人物は、当時新入社員の田中だった。

「私は将来的にドールを自分でプロデュースしたいという夢があったので、企画や製造開発、商品出荷まで一貫してやっているグッスマなら、そういうことも学べると思って入社しました。入社後すぐ、グッスマには”グッスマらぼ”という、新卒メンバーだけで結成されるプロジェクトがあることを知りまして、そのなかに新卒スタッフで商品企画を立ち上げて販売までおこなうというミッションがあることを知りました。『あ、これはチャンスだ!』と思って、新入社員でしたがドールブランドを提案したんです。よくチャレンジを許してくれたと思います」(田中)

 新卒社員が、これまでグッスマにはないドールのブランドを始めるという規格外のプロジェクト。まず田中はドールの素体を作る原型師を探すところからスタートした。さまざまな原型師に話を聞くなかで、グッスマ代表取締役社長・安藝貴範の紹介によって、耽美な世界観で絶大な支持を得ているフィギュアサークル・植物少女園の石長櫻子と出会うこととなる。

「私も以前からドールが好きでドールのヘッドなどを個人的に作っていたんですけど、どうしても試作止まりという状況でした。ドールの世界は入り込むと沼だと思っていて、ものすごく好きだからハマったら危ないなと思っていたんですよ(笑)。いつかはやりたいなという気持ちだけは持っていたところに田中さんと出会い、『これはやるしかない』って覚悟を決めました」(石長)

石長櫻子(植物少女園)原型制作の「鬼龍院皐月 鮮血Ver.」「初音ミク 深海少女ver.」

「理想のドールとは何か」を追求する試行錯誤の日々。
フィギュアとは異なる初めてだらけのプロジェクト

 田中と石長のふたりが出会うことによって、ついにスタートを切ったグッスマのドールブランド、Harmonia bloomプロジェクト。そこから最初に生み出されたドールは、アニメやドラマ化もされた羽海野チカの名作「ハチミツとクローバー」のヒロイン、花本はぐみのキャラクタードールだった。

「弊社はキャラクターフィギュアを多く作っていた経験があるので、社長の安藝からも『まずはキャラクタードールからやってみてはどうだ』という意見をもらい、オリジナルラインを作る前に、はぐちゃんのドールを作ることになったんです。もちろんキャラクターのドールではあるんですが、ボディの原型などはHarmonia bloomのコンセプトに沿って、私と石長さんとで『理想のドールとは何か』というのを話し合いながら進めていきました。私が2016年に入社してその夏にかけて石長さんにアポを取らせていただいて、実際に着手しだしたのは2017年2月ぐらいからになります。石長さんの持つ造形力の魅力を引き出しつつ今までにないフェチズムを感じさせる、みなさんから愛されるようなドールを、という想いで原型を作り始めました」(田中)

  • Harmonia bloom 花本はぐみ

 こうしてプロジェクトは2017年に本格的に動き出すこととなる。その一歩はドールの要ともいえるボディの制作になるのだが、ドールの素体というものはどのようにして作れられるのか?これまでフィギュアも数多く手がけてきた石長は、ドールとフィギュアの違いをこう語る。

「まずキャラクタードールの場合、元となるキャラクターをドールの大きさに変えていきます。ただしそこは単に顔を大きくすればいいわけではなくて、ちょうどいいディフォルメ感というか、かわいく見えるようにバランスを考えていかなくてはなりません。頭で『こうしたらかわいくなるんじゃないかな』って考えていても、実際に手を動かしてみるとうまくいかないことも多くて、そこは試行錯誤の連続でした。またフィギュアの場合だと一体を流れで作れるんですけど、ドールの場合はそこから手足などの可動のためにパーツをバラバラにして、動かしたときにどう見えるか、動きつつもいいラインを出せるように調整していく、というのがフィギュアと違うところですね」(石長)

 キャラクターをドールのサイズに落とし込む作業になるボディの開発。そこにはドールらしさを求める一方で、田中と石長が考える理想のドール、すなわちHarmonia bloomそのものの魅力へと繋がっていく。

「Harmonia bloomのドールは、ほかのドールと比べて口が半開きになっていたり首が長いんですけど、これは私のフェチズムなんですよ(笑)。あと腰回りが大きくて果実みたいなボディラインを作ってくれたのは石長さんなんですよね」(田中)

「開発初期は手足も普通の太さだったんですけど、これも進めていくうちに手足が細くなっていったんですよね」(石長)

 ふたりが考える理想のドールを追求していくことで、Harmonia bloomならではの魅力の数々が素体に盛り込まれていく。そうして完成した原型から、今度はドールならではの作業工程が発生していく。

「ドール自体は、石長さんに作っていただいた原型がありまして、ここからドールにするためには”関節”を作らなくてはなりません。石長さんの原型をデータ化して関節を作って、実際に動かして可動域を確認したり、着せ替えしやすいように腕や足の取り外しやすさなどを追求していきました。フィギュアの場合ですと原型があったらそれを金型に入れて生産していくんですが、はぐちゃんの場合は第1弾のドールというのもあって、こうした関節を開発しては何度も出力して製品に近づけていくという作業になります。あとはドールの特徴としてお顔のメイクとお洋服、ウィッグ、あとグラスアイという、合計5つの要素を同時並行して開発を行いました」(田中)

 一般的なスケールフィギュアの開発となると原型から金型の制作があって、そこから量産、彩色という流れがあるが、ドールの場合はそこからさらに多くの開発が発生する。しかもHarmonia bloomはグッスマとして初のドールブランドということで、グッスマがこれまでフィギュアで培ってきたノウハウを盛り込みながらも、そこには試行錯誤の連続があった。

「すべて手探りで、金型工場のほかにもお洋服工場、ガラス職人さんを探すというところから始めました。実際に中国まで行って現場で開発したり、メイクの量産チェックをしたり、中国語の話せる同僚に頼んで現地で開発のノウハウを学んだりしながら製品までたどり着きました。こうしてブランドとして発売するまでには至りましたが、そこはまだまだ発展途上の段階なので、手にとっていただける方々により喜んでもらえる製品づくりというのは現在も私たちの課題になっています」(田中)

花や樹、星と言った奥深いコンセプトによって形作られる、
Harmonia bloomオリジナルラインの魅力たち

 こうして数々の試行錯誤の末、2018年に初のドールとなる「Harmonia bloom 花本はぐみ」が発売となった。記念すべきドールが完成したときのことをふたりはこう語る。

「正直、売りたくないと思いました(笑)。工場でたくさん量産されるはぐちゃんを見て、『これは全部欲しい!』という気分になりましたね。開発の過程でもいろいろ苦労もあって、最初は受注を開始してから実際に出荷できたのが1年後になってしまい、お客さまにはお待たせしてしまったのですが、石長さんが作ってくれた作品をちゃんとお客様が遊べる機能を持った製品として世の中に出すのはやりがいもありましたし、結果としてみなさんに喜んでいただけて本当にやってよかったなって思いました」(田中)

「完成したときは、めちゃくちゃうれしかったですね。私は原型がメインで関節とかはほぼお任せしていたんですけど、それが製品になって遊べるようになったことがうれしくて、これをみなさんが手に取っていただいて遊んでくれるんだと思うと感慨深かったですね」(石長)

 そうしたキャラクタードールがリリースされたあとは、今度はHarmonia bloomの本領ともいえるオリジナルドールのラインナップがスタートする。現在は「Harmonia bloom ALICE A」や「Harmonia bloom スズラン」と言ったドールがリリースされているほか、シューズセットオリジナルグラスアイが発売となっている。このグラスアイひとつとっても、Harmonia bloomのこだわりというものが注ぎ込まれている。

「そもそもHarmonia bloomのような1/6サイズのドールでグラスアイを採用しているのは珍しいんですよね。グラスアイはほかの瞳に比べて深みがあって美しい、それだけで素晴らしい代物なんですけど、そこもこだわらせていただきました。私は基本的にコンセプトを考えるタイプなので、グラスアイを販売することになったときにまずそのコンセプトを考えました。よく漫画やアニメで”目に星が見える”という表現がありますが、そこから星をモチーフにしたグラスアイがあれば面白いだろうと思って、星座の名前を入れたグラスアイを思いつきました。星座にはそれぞれシンボルカラーがあって、例えば射手座は紫なので、この『オリジナルグラスアイシリーズ 射手座』では紫をベースに、弓矢を引く星座ということで矢の軌道をイメージした模様を螺旋状に入れています。ほかにも『Harmonia bloom ALICE A』はコンセプトとして不思議の国の少女像をモチーフにしていて、金髪碧眼ということで眼の色もブルーがベースになるんですけど、3色の異なるブルーを入れて、瞳孔にはキラキラした粒子を入れてあります。混沌とした不思議の国に目移りしちゃう、好奇心旺盛な女の子を彷彿とさせる眼をイメージしています」(田中)

  • Harmonia bloom ALICE A

 このようにHarmonia bloomは、田中が考える商品の背景に見える詳細な設定というものが大きな魅力になっている。また花をモチーフにしたというブランドコンセプトの根幹にも、田中の並々ならぬ想いが込められている。

「Harmonia bloomのコンセプトは『花のように、いつの時代にも愛される「かわいい」』というものなんですが、私は地上でもっとも美しい自然の産物は花だと考えているます。またお花というのは散って枯れてを繰り返す輪廻のようなイメージがあって、そうしたものを女の子のドールに込めていきたいと思ってこの名前にしました。今後展開予定の企画に関してもこんなことばかりいつも考えているんですけど、石長さんにこれを話すと優しく『わかった』って言ってくださるんですよ(笑)」(田中)

「田中さんの説明はすごく面白いんですよ(笑)。毎回設定を聞くのが楽しみですし、こう説明していただくと原型作りもやりやすいです。」

 そして2020年11月に発売される「Harmonia bloom ALICE L」は、すでに発売されている「Harmonia bloom ALICE A」と対になる、異なる魅力を持ったドールになっている。

  • Harmonia bloom ALICE L

「まず『不思議の国のアリス』をモチーフにしたドールを作ると決めた段階で、衣装作家さんとの会話の中でアリスを2体作ろうという話になっていました。アリスはもともと実際にいた女の子(原作者・ルイス・キャロルの親しい知人の娘)がモデルになっているんですけど、その子をイメージしたときに好奇心が旺盛で元気なアリスと、イギリスの淑女としておしとやかなアリスという、ひとりの女の子なんだけど二面性を感じさせるものを表現したいと思ったんです。なのでアリスのモデルになったアリス・リデル(Alice Liddell)の頭文字をとって、『ALICE A』と『ALICE L』とつけました」(田中)

 ドールを愛するふたりが追い求める理想が芽吹き、今まさに次々と開花を迎えたHarmonia bloom。彼女たちの大きく輝く瞳は、どんな未来を見つめているのだろうか。

「大きな目標としては、Harmonia bloomというドールが世界中の人に愛されるドールになってほしいなという気持ちがあります。そのためには商品をどんどん展開してお客さんに喜んでもらえるように、またそのコンセプトをどんどん発信して多くの方に知ってもらえるきっかけをたくさん作っていけたらいいなと思います。そこは私だけじゃなくて石長さんと協力して今後もやっていきたいですね」(田中)

「田中さんはものすごくたくさんのアイディアを持っている方なので、私としてはそんな田中さんのサポートをして、彼女が自由にやっていけるようになればいいなと思いますね。そのためにできることはなんでもしたいなと思っていますし、同じ人形を愛する者としても応援していきたいですね」(石長)

Harmonia bloom公式サイト:https://www.harmoniabloom.com/
Harmonia bloom公式Twitter:@harmoniabloom
しほぴー@グッスマ:@gsc_shihop
石長櫻子(植物少女園):@shokuen

©羽海野チカ/集英社
©TRIGGER・中島かずき/キルラキル製作委員会
『深海少女』 楽曲:ゆうゆ イラスト:ODESSA (はるよ&マクー)
© Crypton Future Media, INC.www.piapro.net
© GOOD SMILE COMPANY

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