連載企画
LET’S DISCOVER THE SECRET OF A GOOD SMILE!

ー笑顔のヒミツを解き明かそう!ー

 グッドスマイルカンパニー(以下グッスマ)20年の歴史のなかで最大のヒット商品と聞かれれば、多くのフィギュアユーザーが「ねんどろいど」と答えるだろう。2006年に産声をあげ、その後数々のキャラクターたちがデフォルメされた可動フィギュアとなり、今では1500を数えるラインナップを誇るブランドにまでに成長した。そんなねんどろいども2021年で15周年を迎えるが、膨大なラインナップのなかで同キャラクター最多の商品化を誇るのが初音ミクである。グッスマのアイコンであるねんどろいど、そして今やポップカルチャーのアイコンに成長した初音ミク、そのふたつのアイコンの深い関係性も含めたねんどろいどの歴史を、2006年に入社してねんどろいどを初期の頃から知る製造部の月山寛輝、2012年に入社して現在もねんどろいどの商品開発に携わる企画部の濱山明子のふたりに聞いた。

デフォルメしたフィギュアというスタイルと
ラインナップ数という、ねんどろいどの革新性

 顔が大きく体が小さい、いわゆる2頭身のキュートなフォルムをした可動フィギュア「ねんどろいど」、その始まりは2006年となる。”ワンダーフェスティバル”に出展した際に発売された”ネコアルク”のフィギュアが「ねんどろいど」の歴史の第一歩となった。

「最初は現在のような版権/キャラクターをねんどろいど的なデフォルメスタイルにするというよりは、すでにある作品の公式デフォルメイラストから始まったんですよね。それを可動フィギュアにしてみようというところからスタートしたんです」(月山)

「当時のフィギュア業界は、どちらかというとスケールフィギュア主流でした。当時、デフォルメフィギュアを作られている方はそんなに多くなかったと思います。グッドスマイルカンパニーもフィギュア事業をマックスファクトリーさんと一緒にやらせていただいていたんですけど、基本的に頭身の高いフィギュアが主流でしたね。そこから我々単独でも何かやってみようとなったときに、『デフォルメフィギュアだったら作れるかも』という流れもあって始まったと聞いています」(濱山)

  • 製造部・月山寛輝 企画部・濱山明子

 人気ゲーム作品『月姫』に登場したデフォルメキャラのネコアルクはねんどろいどというスタイルと親和性が高く、以降も『月姫』と同じくTYPE-MOON制作のゲーム『Fate/stay night』から「へたれセイバー」「やさぐれ凛」など、すでに作品上でデフォルメされたキャラクターのフィギュア化は多くの反響を呼んだ。そうしたフィギュアの新しいスタイルを提案したねんどろいどはそのラインナップ数とともに、フィギュアシーン、そしてアニメをはじめとしたポップカルチャーにおいて驚異的な速度で浸透していく。

「2006年にリリースしたねんどろいどは5体だったのが、2007年には27体になっています。ロットナンバーでも300番ぐらいまでは毎年20キャラぐらいずつ生産数が増えていって、300番を越えたあたりからおかしなことになっていきましたね(笑)」(濱山)

「スケールフィギュアは版権イラストを元に絵的な全体のバランスが最優先されます。対してねんどろいどはデフォルメされていて、かつ各パーツが交換できる仕様のアクションフィギュアという違いがあります。そういう意味では作りやすいというのはたしかにありましたね。制作期間に関しても、スケールフィギュアに比べて短いスパンで提供できるという利点が最初からありました。」(月山)

初音ミクとの出会いという、
ねんどろいどのターニングポイント

 そうしたフィギュアの新提案として、グッスマによるフィギュアのラインナップのなかでも大きな注目を集めることとなったねんどろいどだが、その15年の歴史のなかで大きなターニングポイントがふたつあったという。

「ねんどろいどのターニングポイントとして、まずひとつは009番の涼宮ハルヒがあります。それまでは公式にデフォルメされたものを、アクションフィギュアとして味付けしてねんどろいどとして出していたんですが、涼宮ハルヒはねんどろいどとしての独自のデフォルメバランスが検討された初めてのねんどろいどです。これ以降のシリーズでねんどろいどはこう作ればかわいくなるぞという一種のデフォルメ手法がみえてきました。そしてふたつ目のターニングポイントとして、033番の初音ミクがあります。この初音ミクで顔の形など、現在につながるねんどろいどのフォーマットがほぼ確立しました。」(月山)

 2007年にクリプトン・フューチャー・メディアからリリースされた音声合成ソフト『VOCALOID2 初音ミク』は、声を合成して音楽と合わせて自作の音楽を制作・発表するというムーブメントを呼び、ミクのポップなキャラクター像とあわせて、ニコニコ動画など動画投稿サイトを中心に爆発的なブームを生んでいた。そんな初音ミクの初期フィギュアとなったねんどろいどが2008年3月に発売されると、ミクのグッズ展開を渇望していたファンによって絶大な支持を得ることとなる。

「とにかくねんどろいどと初音ミクとの相性が良かったんですよね。初音ミクのソフトが発表されたのが2007年なんですが、ねんどろいどが発売されたのが2008年で、フィギュア化されるまでのスパンが短かったのがもうひとつの成功のポイントです。そのとき人気なものをねんどろいどで出すことができるという、ねんどろいどのイメージが確立されるきっかけになった商品だと思います。あと、ねんどろいどの魅力でもある頭が大きくて体が小さい仕様は、安定感がなくてひっくり返りやすいという弱点でもあったんですよ。これはたまたまですけど、ツインテールのミクは髪の毛が足のようになって自立できたんです(笑)」(濱山)

  • ねんどろいど 初音ミク

 そうしたなかで発売された「ねんどろいど 初音ミク」は、現在まで10万個以上のセールスを記録する大ヒット商品となった。これによりねんどろいどの認知はさらに浸透したのと同時に、”ねんどろいどのフォーマット化”がさらに進むこととなる。

「初音ミクに至るまでは試行錯誤がありました。当時はまだねんどろいどのフォーマットというものが確立されていなくて、『らき☆すた』だったら『らき☆すた』のフォーマット、みたいにキャラクター、作品ごとに統一されているぐらいで、あとは結構バラバラだったんです。そうしたフォーマットの概念がなかったものが、初音ミクで整っていきました。」(月山)

「ミクと並行して作っていったものはまだフォーマットもバラバラなんですけど、050番ぐらいから整っていきましたね。2頭身で女の子といえば、だいたい似た形状になっていきますね」(濱山)

フィギュア界の象徴となったねんどろいど。
その裏にあるさらなる技術革新とは

ねんどろいどは初音ミクというひとつの基準が生まれたことでフォーマットが確立され、さらに商品開発・製造のスピードを上げていった。そしてその裏には、ねんどろいどとしてのさらなる技術のブラッシュアップがあった。

「300番の『ねんどろいど 初音ミク2.0』から、表情パーツと首ジョイントの機構が一新されました。それまではフィギュアの頭部を体から外さないと顔の表情パーツの交換ができなかったんですよね。それだと首のジョイントパーツを折ってしまったり、頭がグラグラしてしまっていたんですが、それを前髪と顔パーツを替えるだけで表情交換ができるようになりました。それで遊びやすくなったのと、同時に首の形状も統一されていき、より整備されたフォーマットになっていったわけです」(濱山)

「以前は原型の元となるキャストの顔のパーツを原型師の方に配布して作っていただくことで互換性を持たせていたのですが、アナログな作業の中での多少の誤差はどうしても発生してしまっていました。ですが、今は完全に3Dの素体が存在してほぼデジタル原型となったので、より互換性の精度が上がっています。」(月山)

 またそうしたなかねんどろいどがシーンに広まっていくことで、版権元(ライセンサー)との交渉にも大きな影響があったようだ。

「版元さんにあまり説明しなくてよくなりました(笑)。アニメの制作会社さんなどに『こういうねんどろいどというフィギュアをやりたいんですけど』という説明をしなくてもわかってもらえるようになったのは大きいですね。今はほとんど『こういう2頭身ぐらいで顔が交換できる、動くフィギュアなんですけど』という説明はしていないです」(濱山)

「昔は『ねんどろいどとはこういうものです』という資料がありましたからね。ねんどろいどの知名度が上がったおかげですね。ありがたいです。最初の頃はそれこそこんなに長く続くシリーズになるとは予想していなかったですからね。」(月山)

「ねんどろいど」という資産をより長く楽しむために。
ねんどろいどからのあらたな提案

 業界への浸透度や技術的にも進歩を重ねるねんどろいど。それに応じて手に取るユーザー層もさらなる広がりを見せている。なかでも女性ユーザーの拡大は、アニメシーン同様に大きな鍵となっており、現在ではグッスマとマックスファクトリーによる男性キャラクター専門ブランド「ORANGE ROUGE(オランジュ・ルージュ)」も人気を博している。

「きっかけとしては『刀剣乱舞-ONLINE-』が最初ですね。当時のラインナップは女性キャラクターが主流でした。ただ『刀剣乱舞-ONLINE-』をきっかけに女の子もフィギュアを買ってくれるんだっていうのが明らかになりまして、それを皮切りに『ハイキュー!!』『DRAMAtical Murder』『おそ松さん』など男性キャラクター中心の作品を展開するようになりまして、現在はラインナップ的にキャラクターの男女比はおよそ半々ぐらいにまで、月によっては男の子のほうが多いときもあります。そういう点でもねんどろいどのデフォルメ感と女性ファンの相性は良かったんだなと個人的にも思うことはありますね」(濱山)

 そうしたユーザー層の拡大もあり、ねんどろいどそのものも変化の瞬間を迎えている。過去にも従来のねんどろいどよりさらに手に取りやすい「ねんどろいど ぷち」など別ラインでの展開もあったが、ほかにもねんどろいどに着せ替え可能なドールの要素を入れた「ねんどろいどどーる」がそれだ。

  • ねんどろいどどーる エミリ

  • ねんどろいどどーる リョウ

「以前からねんどろいどの頭部を使って別のお人形につけ替える遊びがユーザーさんのなかで流行っていたんですよ。お人形やフィギュアをただ改造するのも簡単ではないこともあって、それを公式で出したほうが親切で安全に楽しめるかなと思って始めたのが『ねんどろいどどーる』になります。以前から『ねんどろいどもあ』という、ねんどろいど用の着せ替えパーツなどの周辺グッズがいくつかあったんですが、そこから発展して『ねんどろいどをより楽しく』という基本コンセプトは変わらず、よりユーザーさんに遊びを提案できるかというのが出発点になっています。いわばねんどろいどというすでに確立された1,500以上もの資産をいかに活用するかという発想になります」(濱山)

15周年を経てあらたな時代を迎えるなか、
ねんどろいどでより楽しむという提案性を

 ねんどろいどというブランドに初音ミクが登場したことによって、ねんどろいどおよびグッスマのシーンへの認知度は著しく向上した。そして初音ミクもネットなどのサブカルチャーの枠を大きく飛び越えて、現在では日常の至る場所で彼女を見かける。そうしたなかでもねんどろいどと初音ミクの親密な関係性は続き、2021年2月段階で61体とさまざまなバージョンの「ねんどろいど 初音ミク」が発表されている。そのなかでも代表されるのが、北海道を応援するというコンセプトの青い髪の初音ミク、通称”雪ミク”だ。雪ミクは2010年より登場し、毎年デザインを変えながら新しいねんどろいどがリリースされている。

  • ねんどろいど 雪ミク Glowing Snow Ver.

「雪ミクは、ここ最近ですと毎年ユーザーさんから衣装募集をしていて、そこからビジュアルを決めています。それが雪ミクとして1年通して公式になってプロモーションしていかれるので、公募デザインでもしっかり公式感があるようなところを気をつけてねんどろいども考えていますね。そこはクリプトンさんとも毎年協議しながらやらせていただいています」

 さまざまな姿でユーザーを楽しませる初音ミクのねんどろいど。ちなみにふたりがこれまで関わってきたなかで印象に残っているミクのねんどろいどはなんだろうか。

「私は500番の『ねんどろいど 桜ミク Bloomed in Japan』ですね。これは楽月工場という、鳥取県倉吉市にあるグッスマ国内初の工場で製造したフィギュアです。 近年までフィギュアはほぼ100パーセント中国のパートナー工場で製造していたのですが、当時、改めて金型など製造技術の見直しや改善を兼ねて、自分たちで国内で工場を立ち上げようというプロジェクトがありました。このプロジェクトの中で最初に世に出した製品がこの桜ミクになります。そういうトライをした製品という意味で記念のねんどろいどですね。」(月山)

  • ねんどろいど 桜ミク Bloomed in Japan

「私は380番の『雪ミク Magical Snow Ver.』ですね。これが私の担当した初めての雪ミクだったんですが、雪ミクとしても5人目のリリースでちょっと頑張らなきゃというのがありまして。この年の雪ミクは魔法少女がテーマで、魔女っ子的なデザインのものになったんですけど、その前の年の雪ミクが『いちご白無垢Ver.』といって、それがまた豪華な装丁になっていたんですよ。雪ミクは豪華な仕様にしなくちゃと思っていたので、付属品に魔法書をつけました。またパッケージも魔法書のような仕様にしたんですけど、それを梱包する雪ミクのイラストが印刷されたアウターカートンを作って、そこに郵送の伝票を貼るわけにはいかないのでさらに輸送用の箱を作って……と、輸送費がかさんで普通に怒られました(笑)。そういう意味でも勉強になりましたし、ユーザーさんにすごく喜んでいただいたのを覚えていますね」(濱山)

  • ねんどろいど 雪ミク Magical Snow Ver.

 ねんどろいども含めて2021年も日々あらたな初音ミクのフィギュアがグッスマからリリースされている。そうしたなかで濱山が手がけるあらたな初音ミクのフィギュアが、かつてsupercellによる初音ミクの楽曲「恋は戦争」をイメージしたスケールフィギュアの最新バージョンとなる。こちらは先日発表されたグッドスマイルカンパニー20周年記念本に付属する予定だ。

  • 初音ミク 恋は戦争 Refine Ver.

「『恋は戦争』のフィギュアは以前も出して、ファンの方にもご愛顧いただいているフィギュアになります。2年前、『恋は戦争』10周年にあわせて再販もしまして、まだまだミクのフィギュアはいっぱい求められているんだなっていうのを実感したんですね。そこで今回は弊社が20周年になるというときに、弊社がリリースしたスケールフィギュアをリバイバルする形でブラッシュアップさせたものを出したいと思って作ったのが今回の最新バージョンです。すでに販売されているものも素晴らしい出来栄えなんですけど、あれは元々のイラストのイメージからは異なる、美少女フィギュアにするために肌色を女の子らしい色にして……というアレンジがされていたんですね。なので今回出し直すのならイラストの雰囲気をそのままに、よりアート感のあるフィギュアにできるなと思って、ちょっと20周年の記念品としてつけたいなというのがありました」(濱山)

 そして2021年はねんどろいどが生まれて15周年となる。グッスマ最多ラインナップを誇るブランドとしてのねんどろいどの今後を、スタッフのふたりはどう考えているのだろうか。

「15年にわたる長い期間このねんどろいどシリーズに携わらせていただいておりますが、改めて幅広い層の方々にご支持をいただけているのをとても有りがたく感じております。近年特に海外のユーザーさんや女性のユーザーさんが増えてきているなぁと感じますね。 今はグッドスマイルアーツ上海という中国の会社もあり、そこでもねんどろいどの展開があります。商品開発、製造しながら、ユーザーさんの様々なご要望にどのようにお応えしていくかはまだまだ探っている最中です。シリーズが始まった当初、予想しなかったところまでねんどろいどシリーズが拡がっています。これからもその流れに乗りながら私達も楽しませてもらいつつ、それ以上にユーザーのみなさんに楽しんでいただける製品をお届けできればと思います。」(月山)

「ねんどろいどはフォーマット化がかなり確立されていて、300番台以降は本当に安定した生産ラインで高品質のものを出せているという自負があるんですけど、逆に今はねんどろいどのフォーマットを崩すということもできたりします。いわゆる『ねんどろいどってなんだろう?』ということを考えたときに、初音ミクみたいなわかりやすいものからカービィみたいに丸い造形のものまで幅がある、『そういうのもいいよ』といえるシリーズなんだと思います。なのでこれからも既存のラインを踏襲しつつ、『ねんどろいどってなんだろう?』って思わせるものをちょっと変な技術開発にも挑戦していけたらなと思います。あと、よりお客さんがひとつの商品を買って、なるべく長くかわいがって遊んでいただけるように、商品本体の品質はもちろん、そこにねんどろいどもあやねんどろいどどーるといった周辺を強化することで、今持っているねんどろいどがより価値のあるものになっていただけるように商品提案も頑張っていきたいなと思いますので、これからもぜひねんどろいどをかわいがってください!」(濱山)

© LEN[A-7] / Crypton Future Media, INC. www.piapro.net directed by コヤマシゲト
雪ミク2014衣装原案:dera_fury
魔法書デザイン:猫魚/dera_fury
雪ミク&ラビット・ユキネ2016衣装原案:御伽こたつ
雪ミク&ラビット・ユキネ2019衣装原案:- L F -
雪ミク&ラビット・ユキネ2021衣装原案:杏夏蜜柑
ラビット・ユキネ原案:nekosumi
© Crypton Future Media, INC. www.piapro.net

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